2026.09.14 NEW

「エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス」インタビュー公開

「エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス」
インタビュー公開

「エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス」インタビュー

パリ・オペラ座の芸術を受け継ぐふたりが語る、ダンスと人生

2026年8月に開催された「Esprit de la Danse(エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス)」に出演した、パリ・オペラ座バレエ団エトワールのブルーエン・バティストーニ氏と、本公演のプロデューサーを務めた元ダンサーであり振付家・教師のジル・イゾアール氏。

それぞれ異なる立場でダンスと向き合うふたりに、芸術への感性、舞台への想い、そしてレペットとの関わりについて伺いました。

「エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス」の舞台を彩るふたりの言葉を、レペットによる撮り下ろしビジュアルとともにお届けします。

「エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス」インタビュー

内なる世界から生まれる表現

―― あなたの舞台には、静かなエレガンスや繊細な感受性が感じられます。その芸術的な感性はどこから来ているのでしょうか。

ブルーエン・バティストーニ(以下、ブルーエン):私は芸術家の家庭の出身ではありませんが、それでも幼い頃から芸術は身近な存在でした。祖母はピアノを弾き、テレビでバレエを見せてくれましたし、父は絵を描いたり、制作活動を行ったりしていました。また、兄弟たちと私は皆、子どもの頃に楽器を習っていました。
私にとって芸術とは、「何をするか」以上に、「世界をどのように見るか」ということだと思います。
子どもの頃の私は、とても静かで内気な性格でした。自分の想像の世界の中で過ごすことが多く、その経験は今のダンサーとしての私を大きく形作っていると感じています。
私の内なる世界はいつもとても豊かで、踊る役柄に対する多くのインスピレーションを、そこから引き出しています。

―― スタジオを離れた時間の中で、音楽や文学、自然など、あなたの芸術的な想像力を刺激し続けているものは何ですか。

ブルーエン:昔から読書が好きで、そのことは今も変わりません。読書は私の想像力を豊かにしてくれますし、一見するとダンスとは関係のない本からインスピレーションを得て、それを役作りに活かすこともよくあります。
また、自然の中で過ごすことも大切にしています。特に海のそばで過ごす時間は、私の心を落ち着かせてくれるだけでなく、新たなインスピレーションを与えてくれる貴重な時間でもあります。

―― 新しい役に取り組むとき、最初に惹かれるのは音楽ですか、それとも振付やキャラクターでしょうか。あるいは、もっと直感的なものでしょうか。

ブルーエン:もちろん、音楽はとても大きな役割を果たしています。私にとって、音楽なしで振付を覚えることはずっと難しく感じられます。
しかし、最も惹かれるのは、役の物語性や、その人物を形作る背景です。私は役についてリサーチを行い、その人物の立場や人生に深く入り込むようにしています。
そうすることで、その役を踊ることがより自然で本能的なものになり、舞台の上でも自分らしく表現できるようになるのです。

パリへの憧れとレペット

―― レペットはバレエから生まれ、今もなおバレエとの深いつながりを大切にしています。あなたにとってレペットはどのような存在であり、ご自身のバレエ人生とどのように関わってきましたか。

ブルーエン:私にとってレペットは、プロフェッショナルなバレエの世界とパリへの憧れを体現するブランドでした。
私はパリとは別の街で育ちましたが、いつかパリで踊ることを夢見ていました。そんな私にとってレペットは、憧れの舞台へとつながる象徴のような存在だったのです。
その後、パリ・オペラ座バレエ学校に入学する前に、CNSMDP(パリ国立高等音楽・舞踊学校)で学ぶ機会を得ました。そのときに身につけていたダンスウェアもレペットでした。当時の私にとって、レペットは憧れの存在であり、そのブランドを身につけられることをとても誇りに感じていました。

「エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス」インタビュー

次世代へ受け継ぐもの

―― ご自身のキャリアの初期に誰かに教えてほしかったことで、今、若いダンサーたちに伝えていることはありますか。

ジル・イゾアール(以下、ジル):私が若いダンサーたちに伝えているのは、チャンスが訪れたときにすぐ応えられるよう、常に準備をしておくことの大切さです。
私自身も芸術的な成長や技術の向上を追求してきましたが、今振り返ると、キャリアをどのように築き、大きな役に向けてどう準備していくべきかについて、もっと早く知りたかったと思います。
オーディションのその先にあるキャリアを見据えながら、自分自身を磨き続けること。その大切さを、若い世代に伝えていきたいと思っています。

心に残る作品「ラ・シルフィード」

―― 舞台や指導の現場を通じて、特に心に残り続けている作品や役はありますか。

ジル:私にとって特別な作品は「ラ・シルフィード」です。
まだ若く、スジェに昇進したばかりの頃、振付家ピエール・ラコットに見出され、この作品で初めて大きな役を任されました。
それ以来、「ラ・シルフィード」は私のキャリアを象徴する作品となり、ピエール・ラコットはメンターであり、父のような存在になりました。
その後、ダンサーから教師へと立場が変わっても、この作品を指導する機会に恵まれました。
ダンサーとしても、指導者としても歩みを支えてくれた作品だからこそ、「ラ・シルフィード」はダンサーとしての私の原点であり、次の世代へ受け継いでいきたい大切な作品です。

私にとってのレペット

―― 長年にわたり多くのダンサーと関わってこられた中で、レペットはバレエ界においてどのような存在だと思いますか。また、ダンサーにとっての特別な魅力は何でしょうか。

ジル:若い頃の私にとって、レペットはバレエの世界そのものを象徴する存在でした。
当時よく読んでいたダンス雑誌などでレペットの広告が数多く掲載されており、そこには著名なダンサーたちが登場していました。私はその広告を通じてレペットだけでなく、多くのダンサーやバレエの世界について知ることができたのです。
また、レペットはローラン・プティの母によって創設され、ダンスと深く結びついた歴史を持つメゾンでもあります。その長い伝統や、フランスの美意識を受け継ぐ姿勢は、今も大きな魅力だと感じています。
個人的にも、少年時代に履いていたレペットの黒い革のバレエシューズの感触や香りは今でも鮮明に覚えています。さらに、元パリ・オペラ座エトワールであるノエラ・ポントワがレペットのトウシューズで踊る姿は、私にとってフランスのバレエそのものを象徴する光景でした。
だからこそ私にとってレペットは、バレエの世界の中で特別な存在であり続けています。

「エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス」インタビュー

ダンスとともに歩む人生

── 長年にわたりバレエに人生を捧げてきた今、あなたにとってダンスとはどのような存在ですか。また、その関係性は年月とともに変化しましたか。

ブルーエン:ダンスとの関係は、私自身がダンサーとして成長するにつれて変化してきました。
子どもの頃の夢だったものが、やがて仕事となり、それに伴うさまざまな現実とも向き合うようになりました。ダンスを職業として続けていくうえでは、かつて抱いていた理想や期待と向き合い、ときにはそれらを手放すことも必要でした。それは私にとって、とても大切な過程だったと思います。
芸術としてのダンスへの愛情は今も変わりません。しかし現在は、ダンスを人生全体のバランスを支える大切な一部として捉えるようになりました。それは身体的にも精神的にも、とても重要なことだと感じています。

ジル:私にとってダンスは、今も人生そのものです。
幼い頃から音楽に魅了され、『白鳥の湖』の音楽を聴きながら夢中で踊る子どもでした。4歳の頃には、幼稚園の先生が両親に「この子はダンスをするべきだ」と話したそうです。
実際にクラシック・バレエと出会ったのは11歳から12歳頃でしたが、その頃から音楽を探したり、自分で振付を考えたりすることが大好きでした。振り返ると、今私が振付家や指導者として行っていることの原点は、すでにその頃から始まっていたように思います。
また、ダンスは人生における大切な出会いも与えてくれました。パリ・オペラ座に入ったばかりの頃に出会った妻は、今も人生のパートナーです。家族や恩師、仲間たちとのつながりも含め、私にとってダンスは愛の物語そのものなのです。
現在は指導者や振付家として若い世代と関わりながら、自分が受け取ってきたものを次の世代へ伝えていくことに大きな喜びを感じています。
だからこそ私にとってダンスは、人生の物語であり、愛の物語なのです。

「エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス」インタビュー
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「エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス」インタビュー
「エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス」インタビュー

photography : Kiyonori Hasegawa

ブルーエン・バティストーニ|Bleuenn Battistoni

ブルーエン・バティストーニ|Bleuenn Battistoni
パリ・オペラ座バレエ団エトワール

パリ国立高等音楽・舞踊学校で学んだのち、2014年、パリ・オペラ座バレエ学校に入学。17年、パリ・オペラ座バレエ団に入団。21年セルクル・カルポー賞、22年AROP(パリ・オペラ座振興会)賞を受賞。24年3月26日、アシュトン『リーズの結婚』のリーズを踊り、エトワールに任命された。
おもなレパートリーに、ヌレエフ『眠れる森の美女』のオーロラ姫、『白鳥の湖』のオデット/オディール、『ロミオとジュリエット』のジュリエット、コラーリ/ペロー『ジゼル』のジゼル、ラコット『パキータ』のパキータ、バランシン『テーマとヴァリエーション』、フォーサイス『ブレイク・ワークスⅠ』などがある。
パリ・オペラ座初演作品に、マクレガー『ダンテ・プロジェクト』のフランチェスカ(23)、ルグリ『シルヴィア』のシルヴィア(25)などがある。

ジル・イゾアール | Gil Isoart

ジル・イゾアール|Gil Isoart
パリ・オペラ座バレエ団/パリ国立高等音楽・舞踊学校 教師

ニース地方音楽院でバレエを学んだ後、パリ・オペラ座バレエ学校に入学。ジルベール・メイヤー、セルジュ・ゴロヴィンに師事。卒業後、1986年にパリ・オペラ座バレエ団に入団(当時の芸術監督はルドルフ・ヌレエフ)。90年にセルクル・カルポー賞、91年にAROP(パリ・オペラ座振興会)賞を受賞。92年にピエール・ラコットが芸術監督を務めていたナンシー・バレエ団にプリンシパルとして参加。さまざまな作品で主役を踊った。 現在はパリ・オペラ座バレエ団教師、パリ国立高等音楽・舞踊学校のバレエ科教授として後進の指導にあたるとともに、振付家としても活躍している。また、21年からフランスでクラシック作品のガラ公演〈ボーテ・ドゥ・ラ・ダンス〉のアーティスティック・ディレクターも務めている。

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